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#06

触って見つけられる

〝しこり〟について

獣医師の松井隆輔です。当院で犬と猫の腫瘍科を中心に診療を行なっています。本日は犬にできる体の表面から触れる〝しこり〟についてのお話です。年齢を重ねてくると、体の表面から触れる場所に多くの〝しこり〟ができることは少なくありません。発生場所は、全身の皮膚、皮下組織(皮膚と筋肉の間)、肛門部、乳腺部などさまざまです皮膚や肛門の〝しこり〟は目で見えることが多いですが、皮下組織や乳腺部の〝しこり〟は目で見るだけでは気づかないことも少なくないため、普段から体をよく触っておくことが早期発見のために重要です。〝しこり〟といっても、その様子は多様性があります。球形のもの、ゴツゴツしたもの、脂肪のように柔らかいもの、骨のように硬いものまで様々な〝しこり〟が体の表面から触れる場所に発生します。

〝しこり〟の良し悪し

犬に発生する〝しこり〟の多くは良性腫瘍、あるいは腫瘍ではない過形成という病変です。しかし、中には悪性腫瘍も存在しますので安易に様子を見ることはおすすめできません。様子を見ていた〝しこり〟が悪性であった場合、急速に大きくなってしまい負担が大きな手術が必要になるケース、進行して転移を起こし完治が困難なケースなど、治療が大掛かりあるいは困難になり命に関わってしまうことも少なくありません。

ですので、安易に様子を見るのではなく、一度診察を受けていただくことをお勧めします。

〝しこり〟は

ナニモノか?

診察にお越しいただいた際、まずは発生部位、見た目、触感、増大傾向の有無などを評価します。その時、〝しこり〟がある程度大きければ、細胞診検査が実施可能です。細胞診検査とは、細い針を〝しこり〟に刺し、中にある細胞を吸引します。吸引した細胞を顕微鏡で確認することで、悪性腫瘍の可能性が高いかどうかを判断します。非常に硬いため採取される細胞が少なく診断に至らないものや、良性と悪性の判別が難しいもの(乳腺腫瘍など)もあります。しかし、多くの場合で今後の治療プランを決定する上で十分な情報を得ることができます。

治療プランを

計画しましょう

細胞診検査の結果、悪性腫瘍が強く疑われるようであれば、早期に治療することをお勧めしています。治療プランは腫瘍の種類によって手術、薬物治療、それらの組み合わせなど様々です。また、良性腫瘍であっても、しこりが破裂したり、その後の生活に支障をきたす可能性が高い腫瘍も存在しますので、治療対象は決して悪性だけではありません。

また、動物医療の進歩により、腫瘍に対する治療の選択肢も少しずつ増えています。あらゆる治療選択肢をご提案し、それらのメリット、デメリット、費用などもお伝えしながら、動物にとって、ご家族にとって、どういった治療がベストプランなのかを一緒に考えていきましょう。

どれだけ、良い生活を心がけても、〝しこり〟の発生を予防することは難しいです。できてしまった〝しこり〟の早期診断・適切な治療介入により、愛犬の寿命を伸ばすお手伝いができればと考えています。愛犬の体に〝しこり〟を見つけられたら際には早めにご相談ください。